2017年12月17日

あしながおじさん

今日、山口までの往復で「あしながおじさん」を読みました。この話を最初に読んだのはいつだったのか覚えていないのですが、ともかくこの話が大好きでした。今、書棚にあるのは古本屋でかった旺文社文庫版(中村佐喜子訳)。今日読んだのは、岩波少年文庫版(谷口由美子訳)をスキャンしてタブレットに取り込んだもの。なんでこんなにいっぱい買ってるのかなあ(笑)。

前回読み直したのは佐野洋子さんの「ふつうがえらい」にはいっている『こんな女の子と暮らしたい』を読んだからでした。佐野洋子さんがはじめてこの本を読んだのは中学一年のとき。とても愉快で楽しい思いをされたそうです。ところが平成になった頃(?)読み返したとき、なんと読みながら大泣きしたんだそうです。どこで泣くのかというと、ジュディがとっても幸せなところで泣くんです。あしながおじさんができる唯一の愛情表現は金もしくはプレゼントを贈ること。なので、その愛の表現が送られてくると、どっと涙が出てしまうんだそうです。そして、佐野さんは、この小説は楽しく明るいジュディの学生生活の向こうにいるあしながおじさんの心理小説なのだ、○十六の男が二十一歳の女の子に手玉にとられてしまったのだと語ります。あしながおじさんはやきもきする立場しか与えられず、来る手紙来る手紙がどんなにスリリングなものであったろうと同情するのです。そしてラストで一番たくさん泣くのでした。佐野さんの文章を読むとこの本を読まずにいられなくなります。

今回、読み直したのは、15日の山陽新聞夕刊・文化エンタメページに、大宮エリーさんという方が『あしながおじさん』を取りあげたエッセイを読んだからです。大宮さんは若いときには何度トライしても投げ出してしまったんだそうです。時を経て大掃除中に見つかったこの本を読み始めて、驚いたのでした。ぐんぐん引き込まれたのでした。ジュディの書く手紙のディーテールのすごさに、これはおしゃべりそのものだ、彼女の手紙は語りかけてくる、こんな手紙を日々もらい続けたらどんなに心が温まるだろう……と書いておられます。

佐野さんが『赤毛のアン』のアンよりも、『若草物語』のジョーよりもジュディが好きだあると書いておられるのと同じで、ぼくもジュディが大好きです。ジュディはとても賢く、しかもユーモアにあふれる女性です。たとえばある日の手紙の最後の部分を引用してみます(岩波少年文庫版):

日曜日
 きのうこれを出すのを忘れてしまいました。ですから、腹の立ったことを付けくわえさせてください。今朝、礼拝のとき、教会の監督さまがみえて、その方がなんておっしゃったと思います?
「聖書に語られた、わたしたちへのもっとも慈悲深い約束のことばとは、『貧しい人々はいつもあなた方といっしょにいる』(「マタイによる福音書」より)ということばです。貧しい人々は、わたしたちをあわれみ深くするために、存在するのです。」
 考えてみてください、これじゃまるで貧しい人々が、有益な家畜のようじゃありませんか。もしあたしがこんなにすばらしい女性に成長していなかったら、きっと礼拝のあと、その方のところへ行って、自分の気持ちをぶちまけていたでしょう。


※上では「マタイによる福音書」とありますが、旺文社文庫版では「新約聖書マルコによる福音書十四章7節。『貧しい人たちはいつもあなたがたといっしょにいるから、したいときにはいつでも、よいことをしてやれる』」となっています。どっちが正しいのかなと思って調べたら、両方に出ていました。Wikipediaって便利ですね〜。

マタイによる福音書 >> 26:11
マルコによる福音書 >> 14:7

※そんなに賢い女性なのに、どうしてあしながおじさんの正体が分からないのかと、やきもきしながら読んでしまいました。まあそこがいい所なんですけど。

この本の魅力はジュディの手紙の魅力にもよるのですが、もうひとつ、挿絵もすばらしいです。ウェブスター自身が描いているそうです。「へたうま」の元祖です。で、この挿絵にはところどころにキャプションがついているんです(原作ではもちろん英語)。上の2つの日本語訳を比べてみると、そこのところの訳は独自のものを使っているんですね(当然かも)。例えば、手紙の中で最初に出てくるジュディの絵でくらべてみます。

英語版はこちら(新潮文庫版はこれをそのまま?)
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なんだかあまり見たことのない表現が使われていますね。Rear Elevation とか Front Elevation って……どうも製図で使う用語のようです。背面図と正面図。ジュディは幾何の講義をとっていて、円柱とか円錐を習ったようですから、そこで出てきたことばなのでしょう。早速使うところが楽しいじゃないですか。

岩波少年文庫版ではここは「孤児の図 うしろ向き 前向き」、旺文社文庫版では「孤児の像 後ろ向きの図 正面図」となっています。岩波の方はやや子ども向けかも。

何度でも読み返したい本です。
posted by dunno at 15:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 読書
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