2009年11月23日

脇明子さんの講演会「近代ファンタジーの誕生」

昨日の午後、岡山県立図書館で脇明子さんの講演会「近代ファンタジーの誕生〜『不思議の国のアリス』が生まれるまで」を聴きに行きました。

学生の頃、「幻想の論理 泉鏡花の世界」(講談社現代新書)を読んで脇明子さんのお名前を覚えました。去年の11月、オリエント美術館で開催された「音の絵本II よだかの星 新作初演コンサート」に行ったとき、「岡山子どもの本の会」のちらしを見て、脇明子さんが岡山にあるノートルダム清心女子大学の教授をしておられると知り、ほんとにびっくりしました。

先日県立図書館に行った際、この講演会のことを知り、すぐ申し込みました。『不思議な国のアリス』は何度か読みましたが、特にそれほど好きというほどでもなかったんですけれど、一度、脇明子さんの本物を見てみたいと思ったんです。

ティム・バートン監督、ジョニー・デップ主演(?)のディズニー映画『アリス・イン・ワンダーランド』が来年の4月17日(土)から公開されるので、関連企画なのかな? と思ったのですが、単なる偶然のようです。
alice.jpg
(© DISNEY ENTERPRISES INC)
http://alice-movie.jp/

おっと、脱線しました。

で、脇明子さんの講演がとても楽しかったのです。『不思議の国のアリス』の話は全体の3分の1くらいで、前半は
  ドイツ・ロマン派
   ↓
  アンデルセン
   ↓
  イギリスへの影響
の解説でした。

何を隠そう、ドイツ・ロマン派とアンデルセンは昔とてもよく読んだんです。好きな小説の話が次から次にでてきて、とても懐かしかったです。ノヴァーリスの『青い花』でしょ、シャミッソーの『影をなくした男』でしょ、ホフマンの『クルミわりとネズミの王さま』、あ、もちろんグリム童話集も! これらが18世紀末から19世紀の初めの作品群です。アンデルセンが童話を書き始めるのは1835年からになります。

アンデルセンの話になって、彼の日本への影響にも言及されました。森鴎外の訳した『即興詩人』は、樋口一葉や泉鏡花に大きな影響を与えているとおっしゃっていました。森鴎外の小説って難しそうな印象があって、あまり読んでいませんが、むかしNHKラジオの朗読『玉を懐いて罪あり』は最後まで聴きほれました(ホフマンの『スキュデリー嬢』の翻訳だからということもあるのだけれど)。

岩波文庫版アンデルセン童話集の2冊目が家にあったので、子供の頃からこれを何度も何度も読みました。「モミの木」「まりとコマ」なんか印象に残りました。脇さんによると、無生物や植物などの擬人化というのもアンデルセン童話の特徴のひとつだそうです。今時の擬人化だと、まるで人間のように動いたりするんですけれど、アンデルセンの場合はリアリスティックで、自分で勝手に動いたりはしないんです。なるほど……。

グリムの英訳がでるのが1823年から、アンデルセンの英訳がでるのが1846年からです。それぞれ、"fairy-tale" とか "fairy-story"という言葉で表現されたのが注目すべき点なのだそうです。なので、影響された作家たちの作品にいっぱい妖精が出てきます。主な作家として、ラスキン、サッカレー、マクドナルドの名前が挙がり、さらに『水の子』のキングスレイのことも出てきました。『水の子』が出たのが1863年、『不思議な国のアリス』が書かれたのが1865年です。『水の子』……好きだったんですよ。煙突掃除のトムという少年が仕事先で泥棒を働いたと疑われ、逃げ出して川に溺れて死んでしまうんです。でも、不思議なことに「水の子」とよばれる赤ちゃんに生まれ変わるんです。優しい妖精のお姉さんに水の子たちは可愛がられています(ぼくは、綺麗なお姉さんに可愛がられる話が好きなんだと思います(爆))。あるときトムは妖精の留守中に、しまってあったお菓子(おぼろな記憶では金平糖)を盗み食いして、最初は一個だけのつもりが止められなくなり、全部食べてしまうんです。すると体中にとげのようなものがはえてしまうんですよ〜。ここが一番頭に残ったところです(笑)。この本は、ぼくが大学生になって家を出てから親が勝手に処分してしまったので(怒!)、30代終わり頃、英語版を購入しました!
waterbabies01.jpg waterbabies02.jpg
左が表紙カバーで、右が上で書いたシーンです。綺麗な絵がいっぱいの素敵な本です。

『不思議な国のアリス』の話はざっくりカットすることにして、ぼくがちょっと残念だったのは、ロマン派のところでハウフの童話の話が出なかったこと。ハウフってロマン派じゃないのでしょうか。彼の一番有名な『隊商(キャラバン)』は1826年に出ています。ちょうどアラビアン・ナイトのような感じで、毎晩色んな話を誰かが語るという構成になっていて、実はあるしかけがあり、最後にとてもびっくりするんです! というか、小学生だったぼくは仰天しました。そういうところで、芸術として格が低くなるんでしょうか。ぼくは好きなんですけど……。

ところで、今、岩波少年文庫版の『隊商』を開いてぱらぱら眺めていたら、昔のメモが挟まっていました:

をい、さやか、たべたか、やさいを
いか、たべたかい
かい たべた いか
たしかに かした

誰の字かなぁ? 馬鹿なことやってますね(^^; 姪っ子にほんとに「さやか」っていう子がいるんですよ。

話が脱線しまくってますね。脇さんのまとめは、この時代「少女の視点」で世界を見ようとした(男性)作家が多く出た、「女子どもの目」で見ることから発展したのが児童文学である、ということでした。ふうむ。そうなんだ……。

とても心地よい講演会でした。楽しめました。
posted by dunno at 21:33| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記
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