2012年03月17日

石牟礼道子対談集 魂の言葉を紡ぐ

先月のぼくの誕生日に、東京にいる次男からお祝いの電話があり、誕生日プレゼントになにが欲しいか聴かれました。甘いもの好きのぼくは、即座に、「ミルフィーユか六花亭のバターサンド!」と答えました。で話しているうちにどうしてもバターサンドが欲しくなり(卑しい!)、バターサンドの方を頼みました。ところが、東京でもなかなか売っているところがないらしくて、後日、また、電話がかかってきて、他になにか欲しいものはと訊かれてしまいました。一旦電話を切って、じっくり考えていて、ふと思いついたのは石牟礼道子さんのこと。『十六夜橋』を読んですっかりその世界に引き込まれてしまったので、石牟礼さんの本をお願いしたくなりました。amazonで検索してかなり悩んだ後に『石牟礼道子対談集 魂の言葉を紡ぐ』に決め、バターサンドはもういいからこっちをお願いします、と連絡しました。

『十六夜橋』
http://flim-flam.sblo.jp/article/48146642.html

十日ぐらい前、東京から岡山に来てくれた次男はなんとバターサンドと石牟礼さんの本と、両方を持ってきてくれました。どこかのデパートで北海道展をやっていて購入できたのだそうです。なんと優しい息子でしょう。ぼくの子じゃないみたい(自慢ではないが、ぼくが親に誕生日プレゼントをしたのは、小さいときの肩たたき券しかないです)。

tamashiinokotoba.jpg

この対談集を少しずつ少しずつ読んで、今日、読み終えました。

読んでいて、自分の生き方の矮小さを思い知らされ、耳の痛い思いをしましたが、志村ふくみさんという染織家の方との対談「色は匂えど」はとっても心地よい、心が洗われました。志村さんという人は初めてのような気がしたのですが、読み進んでいくうちに、あれっ? どこかでこの人のことを読んでる! という気がしてきました。

2月の末だったと思いますが、ある方から「公園の桜の木がピンクに色づいてきている」という話をうかがったときに、花が開く前の桜の木で染色をする話を思い出したところだったのですが、まさにその話が出てくるではありませんか。なんという偶然。

でも、どこで読んだんだろう……とは気になってはいたものの思い出せず、今日、全部読み終わって、あれやこれや思い巡らしていて、やっと思い出しました。道浦母都子さんの本です☆ 書棚に行ってちょっと眺めても目に入らなかったので、amazonで道浦さんの本のリストを眺めていて、ようやくどの本かわかりました。『たましいを運ぶ舟』です。本がわかったので、すぐに書棚から見つけ出すことができました。

『たましいを運ぶ舟』
http://flim-flam.sblo.jp/article/40547427.html

「春待ち」という節に、道浦さんは次のような文章を書いておられます:

 寒風の中を近くの丘陵を歩いてきた。
 (略)
 桜は、というと、小さくて細い巻貝のような蕾が芽生えはじめている。
 春待ちの季節。
 落葉を終えた裸木のあいだを、風が音を立てながら吹きっさらし、ちらほらと風花が舞う。いつからか、そんな日が好きになった。今日も、窓の外を眺めていると風花が舞っているのに気付き、慌てて、外に出てみたのである。
 この季の桜の木は、よく見つめていると、樹木全体が、ぼおーとうす紅に艶めいて見える。夕暮れの方が、その感じがよくわかるのだが、しっかり、眺めてみないと気が付かない。
 開花期をじっと待つ桜。その桜が、春を迎えて満開の花を咲かせるために、渾身の身の力を込めて樹木全体に紅を溜める。
 そのため、寒期から春へと移り変わる時期の桜の樹からは、春になれば開花するであろう幻の紅が、樹木全体に漲り、風花の舞うような寒い日であっても、ほんのりとした紅を、樹の姿全体にまとうのである。

 この話を教えて下さったのは染織家の志村ふくみさんだ。
 (以下略)


この後、桜の色を出すためには、この季節の桜の木でないといけない……という話につながっていきます。この本の中でもっとも印象的なエッセイでした。

志村さんは、染色という仕事の、たとえば草木を切ってきて炊き出すという作業について、ある意味「自然破壊」だとおっしゃいます。植物、動物、鉱物のそれぞれの命をいただいて仕事をしているのだということを常に考えておられます。

こうやって夜中までパソコンに向かっている自分が、いかに「色や響きや香りを感じる力」をなくしているか思い知らされます。

自分があとどのくらい生きるかわからないけれど、大きく向きを変えたいな……と思います。

posted by dunno at 00:42| Comment(2) | TrackBack(0) | 読書
この記事へのコメント
私にとっては染色もし紬織りもする随筆家と思って読んでたら紬織で人間国宝になってた。それほどスゴイ人であったかと驚きましたが、それほど文も見事だったんです。なのに、すっかり、志村ふくみを忘れてた。今、県図書に予約入れました。(^^)v
優しいご子息ですね。私は自腹で天満屋で買ってこよう。
Posted by uru at 2012年03月19日 09:34
えっ、人間国宝なのですか! 知りませんでした。志村ふくみさんご自身の本も読まねば! まずは丸善で立ち読みから(笑)。
Posted by dunno at 2012年03月19日 09:49
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