2012年11月22日

橋本梧郎と水底の滝 第一部・南回帰行

昨日(11/21)、3時半から動物学科の小林先生のゼミで映画の上映会をされるというので、観に行ってきました。それが岡村淳さんが製作・構成・撮影・編集・語りをすべてひとりで担当された『橋本梧郎と水底の滝 第一部・南回帰行』です。

『南回帰行』
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/000044/20110326007192.cfm

橋本梧郎と言っても知っている人は少ないでしょう。ぼくも全く知りませんでした。Wikipediaには次のように書かれています:
1913年生まれ。静岡県小笠郡小笠町出身。

静岡県立掛川中学校卒業。

1934年、単身ブラジルに渡る。ブラジルの農学校を卒業して以来、博物館職員や学校教師としての活動のかたわら植物採集を続けた。生涯をかけて集めた標本は10万とも15万ともいわれ、個人が所蔵する植物標本としては世界最大である。1950年、植物愛好家らを組織化しサンパウロ博物研究会を設立した。

ブラジルに帰化し、サンパウロ州サンパウロ市にて植物研究を続けていたが、2008年、多臓器不全により死去。


この映画で使われた映像が撮影されたのは2007年。亡くなられる前の年です。

「水底の滝」というのは、昔ブラジルにあった巨大な滝。そのそばで橋本さんは長年研究を続けておられました。その滝は、今は、ダム湖の下に眠っています。その場所に再び行ってみよう、というのがこの映画の狙いなのですが、この第一部ではそれは叶いません。なにしろもう94歳という高齢。しかも腎臓が悪く食べものにもあれこれ気を遣わなければなりません。岡村さん自身も日本に行く予定が入ります。受け入れてくれる現地の人との連絡もなかなか取れない……。ということで、橋本さんが昔初代館長を勤めた博物館とその近辺を訪ねる短い旅を描くことがこの映画のメインイベントになりました。

岡村淳監督はすでに何本もこの人のドキュメンタリーを撮っておられます。橋本さんの気むずかしい気質などにも慣れておられるので、話のもって行き方のうまいこと(笑)。なかなか旅を決心しない橋本さんをうまく誘導していきます。また終わりの方ですが、博物館の今の館長さんが、橋本さんが館長だった当時から残っているジャンク(失礼!)の処理に困っておられるので、うま〜く、その処分の許可を貰います。最初は、ここに棚を作ってきちんと整理して……と他人でも冷や汗の出る(笑)ようなことを言っておられましたが、最後はごく少量の資料だけ残し、あとは処分してくれと……いうところに落ち着きました。ほっ。

橋本さんはすでに配偶者を亡くされており、今はやはり配偶者を亡くしたユキさんという十ばかり若い女性が世話をしています。十ばかり若いということはもう80代半ばなのですが、家事もてきぱきこなせば、友人とゲートボールも楽しむというなかなかの元気者。若いです。それにしても、橋本さんのことを立てること! 「あんた」なんて絶対呼びません。「先生」です。

ともかくこのユキさんがいいキャラクターで、彼女の方が主人公と言ってもいいくらい。まだお元気だそうですが、橋本さんが亡くなってしまったので、ご自分のお子さんところを回っておられるそうです。

年寄りをどうするのか、そして自分自身も年を取ったらどうするのか、それは自分にとってとても身近な問題です。ぼくの母も一人で暮らしていて寂しがるので、可能な限り毎晩定時に電話をかけます。そして毎月数回週末を山口まで行って一緒に過ごすよう努めています。パソコンをあけて作業などしていると機嫌が悪くなるので、できるだけそれは深夜にすることにし、話をともかく聞くのが仕事です。その点橋本さんは、やりたいことがあるから手間いらずかも。なにしろ標本を整理し始めたら、声をかけるのもうるさがるのですから。とはいえ、監督やユキさんが掛ける声を聴いていると自分の母のことを連想せずにはおれませんでした。二人とも、自ら好きでそういう状況に飛び込んでいるわけで、ほんとによくやられるものだと感心します。上映後のトークで、監督さんは「老人の介護が趣味なわけではないんです」とおっしゃっていました。なのにここまで入れ込まれるという作家魂がすごいですね。

ところで、いくらブラジルとは言っても、街から簡単に行けるような所には大自然は残っていないのですね。橋本さんは旅先で「粘菌」を探そうと林の中を歩かれますが、結局見つかりませんでした。橋本さんは1930年代に自分の採集した粘菌を昭和天皇に献上したことがあって、その近くの場所で探したんもですが、もうすっかり変わってしまっていたのです。観客であるぼくも、「粘菌」がみたい……と思って期待していたのでがっかり。監督さんは翌年別の場所で見つけた粘菌のデジカメ写真を紹介して、観客の期待に少しだけ応えてくれました。

岡村さんは他にも色々気になるドキュメンタリーを作っておられます。詳しくは下のサイトからどうぞ。26日の日曜日には最新作の上映が小岩であるようです。23日には小岩に行くのですが、26日は用事で観に行けません。ニアミスです。残念。きっとまたなにかチャンスがあるでしょう。

岡村淳さんのサイト『岡村淳のオフレコ日記』
http://www.100nen.com.br/ja/okajun/

posted by dunno at 11:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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