2013年01月05日

恋に至る病

シネマクレール丸の内で『恋に至る病』を観ました。

女子高生ツブラがさえない中年生物教師マドカに恋して猛烈なアタックをします。見事強引に性交したら、彼女の妄想(^^;の通り、二人の性器が入れ替わってしまうというけっこうトンデモ系な映画です。



う〜む、正直このツブラがあまりにあっけらかんとしすぎていて引き込まれませんでした。彼女には「死んでも腐りたくない」という強迫観念があって、防腐剤入りの食品や薬ばかり口にして生きているという興味深い設定がされているのです。そして彼女の妄想の中ではセックスというのは“ドロドロのグチャグチャで混ざる感じ”。“まざって混ざりきって、永遠に腐ることなくマドカの中に残りたかった”のでした。でもその気持ちがあまり説得力を持ってないんです。ツブラの気持ちにはまれるかどうかでこの映画の評価は大きく変わりそう。

実は彼女には親友のエンという子がいて、エンは性的に奔放なんだけど、実は男には恋ができず、ツブラのことを密かに恋しているんです。さらにその幼なじみであり隣人である男の子マルはエンのことを恋しています。この4人が絡まり合ってきてやっと映画は面白くなります。というか、親友のエンっていう子がなかなかいい☆ そしてマルも。この二人は恋しい故に、自分を必死に抑えているところがほんとに健気で切ない。それと比べてツブラはやり過ぎ。マルとエンの「あの」シーンはすごくよかったです。あと、ツブラとエンの「あの」シーンもよかった。

予告篇はずいぶんテンポがよくて楽しそうなんですけれど、実際の映画はもっとじと〜っとしていてちょっと退屈。ぼくの隣の隣の席の方はかなりスースーと寝息を立てておられました。

公式サイト
http://www.koiniitaruyamai.com/

※ 一夜明けて続きを書いています。かなりネタバレなので未見のかたはパスしてください。
この映画の中で描かれるセックスは2回。

一回目は女子高生ツブラが生物教師マドカに襲いかかるもの。これで「入れ替わり」が起きるのだから、元に戻すにはもう一回やるしかないだろうなと想像はつきます。しかし、マドカはツブラが近づいただけで吐き気がするほどダメージを受けていて、そういうことはありえない状況。

結局、色々あって(その展開があまり納得できないのですが)、二人が楽しくふざけ合ったりするシーンも描かれ、最終的にはうまくいって元に戻るわけです。1回目とは対照的な雰囲気。

ツブラはそれっきりマドカにつきまとうことは無くなります。憑きものが落ちた感じ。結局、ツブラの恋って自分の妄想(病気)が異様にふくらんで作り出していただけのものだったのですね。マドカもほっとしたような、ちょっとさみしいような表情でした。でもなにかが彼の中でも変わったのだったらいいな、と思わせる終わり方でした。

マルのエンへの恋、エンのツブラへの恋、どちらも残念ながら実らなさそう。でもそれはそれで、切ないけれど心に残るものになりそうです。

ちょうど昨年末から(山口への帰省中の中断を挟んで)正月にかけて読んだ本ですごい両思いの話を知りました。この映画とは直接関係ないですが、ある意味対照的なのでメモしておきます。その本は石牟礼道子さんの「最後の人 詩人 高群逸枝」(藤原書店)。高群逸枝と夫の橋本憲三を描いています。1964年、熊本にいた石牟礼道子(37歳)は、偶然高群の「女性の歴史」を読んで感動し、高群(70歳)に手紙を書きます。その数ヶ月後、高群は死去。翌年、高群の夫・橋本とその妹(偶然にも石牟礼の隣人!)が石牟礼を訪問。1966年には晩年の橋本の住む世田谷の「森の家」に石牟礼は仮寓することになります。ちょうど「苦海浄土」を書いていた時期にあたります。名編集者であった橋本のことをまだ若かった石牟礼は「師」と読んでいます。「最後の人」とはこの橋本のこと。橋本は生涯(彼女が亡くなってからも)高群に尽くし続けます。高群は彼にとって神のような存在なのでした。その橋本が石牟礼に自分のみた夢の話をするところがあって、とても印象的でした(p.227--p.228):
「……(略)……。
 あのねえ、それが、じつは、生前はけっしてあんな、あらわな姿を見せるようなひとではなかったのですけれどもね、あの、全裸でね、彼女がこのベッドの中に訪れたのです。こんな病人になってしまって、うごけなくなっているものですからね。訪れてくれたと思うのですけれど、このベッドの中に来て、寄り添ってくれているのですよ。じつにふくよかな、あたたかい肉体をしていましてね、ああ生きているときのまんまでした。
 あんまりリアルにその、体の重みが感ぜられるものですからね。このぼくの寝ている左側の方に来て、ぴったり寄り添ってましてね、ぼくはもう何とも云えぬ神秘感に打たれて感動しているのですけれど……。
 ……(後略)……」

(この夢の続きは直接お読みください)

二人は「面会お断り」の札を玄関に掲げて、森の家に引きこもって暮らしました。これもひとつの純粋な恋のあり方ですね。
posted by dunno at 23:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画
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