記録映像作家・岡村淳さんは、ブラジルに移住され、日本人移民のドキュメンタリー映画などを数多く作ってこられました。岡村さんを知ったのは、昨年の11月に岡山理科大学で開催された『橋本梧郎と水底の滝 第一部・南回帰行』の上映会のときです。そのときの覚え書きはこちらをご覧ください:
『橋本梧郎と水底の滝 第一部・南回帰行』
http://flim-flam.sblo.jp/article/60219173.html
その岡村さんが『忘れられない日本人移民 ブラジルへ渡った記録映像作家の旅』という本を出版されました。
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出版社「港の人」の紹介ページ (書評も読めます)
本は7つの章にわかれています
○ひとり取材、ひとり語り
ご自身について語っておられます
○ブラジルの百姓 石丸パウロ春治さん
「土地なし農民運動」の最前線で指導者となった日本人移民・石丸さんの心意気が描かれます。
○ブラジルのおじさん 溝部富雄さん
岡村さんにとっての「おじさん」のような溝部さんとの様々な体験や溝部さんのこれまでの人生などが紹介されます。
○100年目の東京物語 森下妙子さん
森下さんの60年ぶりの里帰り・姉との再会・お母さん(養母)の消息など、ハンカチなしでは読めない章です。
○シネマもろとも 小泉照男さん
かつて無声映画の弁士をつとめ、その後大衆演劇(?)の座長をし、最後はは一人芝居を続けられた(たとえば『瞼の母』の番場の忠太郎とおはまをひとりで演じる!)小林さんのお話。岡村さんは小泉さんに『土佐源氏』をやってみたらと勧められたのですが、『瞼の母』をやりたい人に『土佐源氏』は受け入れられないでしょう(笑)。
○移民と原爆 森田隆さん
在ブラジル原爆被爆者協会の創始者森田さんのことを中心にした在外被爆者がテーマの章。日本にいる日本人からは移民として差別され、さらに被爆者としても差別されるという2重の差別に苦しんできた人たちがいるのです。ですが、そんな彼ら(森田さんではありません)の口から外国人元従軍慰安婦たちへの差別のことばが出ると、心が痛みます。
○時をかける移民 石井俊子さん
陶芸家の石井さんの話。石井さんは、ずっと農場で主婦を続けてこられ、70になって陶芸を始められたのです。とても魅力的な方。生き方が胸をうちます。彼女とその夫を描いた『ブラジルの土に生きて』がみたい☆
※ 6/27に鎌倉で上映会があるそうです:
http://d.hatena.ne.jp/miasiro/20130529/p1
ぼく自身、25歳のときにアメリカに留学して、最初は2年ぐらいで帰るつもりが、博士論文がなかなかできず、学生生活が3年も続き、さらにアメリカの大学に3年契約の仕事がとれ、そのままずっといることになっていたのかもしれませんが、そうこうするうちに日本での就職口が見つかりあっさりと帰国してしまったという軟弱者なのでした。
外国暮らしは、日本のしがらみから解き放たれて楽しくもありますし、また何となく根無し草のような心細さも感じるものだと思います。ぼくの知っている世界とはまた違う場所で、力強く、あるいは淡々と、あるいはがむしゃらに生きてきた人たちの姿はほんとうに心に残ります。先週はこの本をもって寝床に行き、毎晩一章ずつ読んで彼らに思いをはせながら眠りにつきました。いい一週間でした。
オススメ本です。
2013年06月11日
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